リターンは大きく、リスクは小さく
前回記事で、「リターン」「リスク」で投資商品の性質を一番よく表せることを記載した。
さて、それら二つの指標は、大きい方がいいのだろうか、小さい方がいいのだろうか。
リターンについてはいうまでもない、大きい方がいいだろう。得られるお金は多いに限る。
ではリスクはどうだろうか。
「通常の意味」でのリスクは小さい方がいい。悪いことが起こる確率は、小さいにこしたことはない。
しかしリスクの「金融での意味」は「ばらつきの大きさ」である。果たしてこれは大きい方がいいのか、小さい方がいいのか。
極端な例を考えてみよう。
例えば投資商品Aのリターンが
1年目:40%
2年目:ー30%
3年目:40%
4年目:ー30%
である。この場合の平均リターンは5%であり、リスクは35%である。
次に投資商品Bのリターンが
1年目:5%
2年目:5%
3年目:5%
4年目:5%
であるとする。
どちらがよいだろうか。この場合も平均リターンは5%であるが、リスクは0%である。
幾何平均リターンを考えてみればお分かりだろう。
同じ平均リターンでも、
・リスク35%の投資商品Aの幾何平均リターンは-1%である。
・リスク0%の投資商品Bの幾何平均リターンは5%である。
すなわち、リスクは小さいほうがよいのだ。
シャープレシオ
リターンは大きい方がいい。
リスクは小さい方がいい。
このような関係の2指標を一つの指標で表したい場合、しばしば割り算が使われる。
つまり、二つをまとめて
リターン/リスクが大きい方がいい。
と記載できるのである。
このリターン/リスクのことをシャープレシオという。
シャープレシオの求め方
平均リターン求め方は大変単純で、
①全部足して
②足した個数で割る
とうものであった(小学生レベル)。
幾何平均リターンの求め方もそれほど難しくはなく、
①全部掛けて
②「1/掛けた個数」乗する
というものであった(中学生レベル)。
リスクの求め方もそれほど難しくはなく、
「平均との差」の平均
というものであった(小学生レベル)。
シャープレシオの求め方は上で説明した通り最も簡単で、
リターン/リスク
というものである(小学生レベル)。
例えば投資対象Aのリターンが
1年目:40%
2年目:ー30%
3年目:40%
4年目:ー30%
だった場合、この商品Aの4年間の平均リターンは
(40-30+30-40)/4=5%
となったが、幾何平均リターンは
(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1%
となる。
そしてリスクを求めるにはまず平均リターン5%との差の大きさをそれぞれ
1年目:35%
2年目:35%
3年目:35%
4年目:35%
と求め、その平均
(35%+35%+35%+35%)/4=35%
と計算できる。
従ってシャープレシオは、
5%/35%≒0.14
と計算できる。
シャープレシオの嘘
シャープレシオについての基本的な解説を行ったが、平均リターンと同様、シャープレシオについても世間の理解が浅すぎる。
シャープレシオについて解説しているサイトをいくつか見たが、どれも「シャープレシオがよい投資商品を選びましょう」程度である。
正直、何もわかってないと言わざるを得ない。
その理解だと、「シャープレシオ最大の投資商品に消費すればいいのだ」としか解釈できない。
それで何人もの人が、バランスファンドなんかを購入してしまっている。
冗談じゃない。
シャープレシオ最大がベストなのは、ある特殊な条件が加わったときだ。
大抵の人はその条件を満たさないのだから、シャープレシオ最大を選んではいけないのである。
次ページ以降、詳しく解説する。