問題4を解いていこう
前記事で述べたように、問題4を一瞬で解ける公式など存在しない。
地道に一つずつ計算していこう。
もちろん計算量が膨大なので、基本的にエクセルで一気に計算したい。
Excelを使い慣れていない人はそれすらも難しいと思うので、この記事を追って確認してほしい。
A | B | 0.1 | ||
リスク | 25% | 6.26% | ||
平均リターン | 5% | 0.75% | ||
例 | 1年目 | 30% | -5% | =30%*0.1-5%*0.9 |
2年目 | -20% | 10% | ||
3年目 | -20% | -5% | ||
4年目 | 30% | 3% |
まずはAが0.1(当然Bは0.9)の場合、
1年目のリターン:30%*0.1-5%*0.9=-1.5%
となる。
2~4年目も同様に計算すると、以下のようになる。
A | B | 0.1 | ||
リスク | 25% | 6.26% | ||
平均リターン | 5% | 0.75% | ||
例 | 1年目 | 30% | -5% | -1.5% |
2年目 | -20% | 10% | 7.0% | |
3年目 | -20% | -5% | -6.5% | |
4年目 | 30% | 3% | 5.7% |
次に4年間のリスクと平均リターンを計算する。
リスクは標準偏差なのでSTDEV.P関数、平均リターンは文字通り平均なのでaverage関数を使えばよい。
A | B | 0.1 | ||
リスク | 25% | 6.26% | 5% | |
平均リターン | 5% | 0.75% | 1.2% | |
例 | 1年目 | 30% | -5% | -1.5% |
2年目 | -20% | 10% | 7.0% | |
3年目 | -20% | -5% | -6.5% | |
4年目 | 30% | 3% | 5.7% |
大変簡単である。あとはこれをBが0.2、0.3、・・・0.9まで計算すればよい。
A | B | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | ||
リスク | 25% | 6.26% | 5% | 6% | 8% | 10% | 12% | 15% | 17% | 20% | 22% | |
平均リターン | 5% | 0.75% | 1.2% | 1.6% | 2.0% | 2.5% | 2.9% | 3.3% | 3.7% | 4.2% | 4.6% | |
例 | 1年目 | 30% | -5% | -1.5% | 2.0% | 5.5% | 9.0% | 12.5% | 16.0% | 19.5% | 23.0% | 26.5% |
2年目 | -20% | 10% | 7.0% | 4.0% | 1.0% | -2.0% | -5.0% | -8.0% | -11.0% | -14.0% | -17.0% | |
3年目 | -20% | -5% | -6.5% | -8.0% | -9.5% | -11.0% | -12.5% | -14.0% | -15.5% | -17.0% | -18.5% | |
4年目 | 30% | 3% | 5.7% | 8.4% | 11.1% | 13.8% | 16.5% | 19.2% | 21.9% | 24.6% | 27.3% |
効率的フロンティア
さて、上表の上3行に注目しよう。諸事情によりちょっと順番を入れ替える。
B | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | A | ||
リスク | 6.26% | 5.49% | 6.01% | 7.55% | 9.65% | 12.01% | 14.50% | 17.07% | 19.69% | 22.33% | 25.00% | |
平均リターン | 0.75% | 1.18% | 1.60% | 2.03% | 2.45% | 2.88% | 3.30% | 3.73% | 4.15% | 4.58% | 5.00% |
これをグラフにとってみる。
AとBの比率によって、このような曲線を描いている。
これを(AとBの)効率的フロンティアという。
ちなみに問題4を解く上で効率的フロンティアのグラフは役に立たない。
これがわかっていないと次ページの話がわからないから提示しただけである。。
しかしよく観察するといろいろなことがわかるだろう。
例えば「B100%に投資する意味がない」など。
B100%と同等のリスク(6%強)で、A20%B80%にリターンで勝てない(1.6%と0.75%)のである。
効率的フロンティアの性質
見ての通り、相関係数が1でない二つの投資商品でポートフォリオを組むと、リスク・リターンは直線で変化するわけではない。効率的フロンティアという曲線で変化する。
https://ameblo.jp/metros/entry-10621994711.html
ちなみに上図にて示されるように、
・相関係数が1のときは、効率的フロンティアは証券Aと証券Bを直線で結ぶ線となる。
・相関係数が小さくなるにしたがって、効率的フロンティアは左に膨らむ。すなわち同じリターンを狙う場合でも、小さいリスクで実現できる。
・相関係数がー1、すなわち証券Aがプラスなら証券Bは常にマイナス、という状態(でかつ証券A,Bともにリターンがプラス)なら、リスク0でリターンだけを享受できる。ちなみに現実にはそんな組み合わせは存在しない。
これが分散投資の本当の効果である。
投資をわかっていない人がよく言う「卵は同じカゴに入れるな」とかそういう浅い話ではないのだ。
異なる投資商品であっても、相関係数が1に近ければそれは「同じカゴに入れている」のと同じ状態なのである。
問題4の答えは
それでは問題4の答えを解いていこう。
といっても、上の表でそれぞれのポートフォリオのリスク・リターンを計算したのであとは簡単である。
B | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.7 | 0.8 | 0.9 | A | ||
リスク | 6.26% | 5.49% | 6.01% | 7.55% | 9.65% | 12.01% | 14.50% | 17.07% | 19.69% | 22.33% | 25.00% | |
平均リターン | 0.75% | 1.18% | 1.60% | 2.03% | 2.45% | 2.88% | 3.30% | 3.73% | 4.15% | 4.58% | 5.00% | |
μ-σ^2/2 | 0.55% | 1.02% | 1.42% | 1.74% | 1.98% | 2.15% | 2.25% | 2.27% | 2.21% | 2.08% | 1.88% | |
シャープレシオ | 0.120 | 0.214 | 0.266 | 0.268 | 0.254 | 0.239 | 0.228 | 0.218 | 0.211 | 0.205 | 0.200 | |
最適レバレッジ | 1.91 | 3.90 | 4.43 | 3.55 | 2.63 | 1.99 | 1.57 | 1.28 | 1.07 | 0.92 | 0.80 |
さてすでに説明した通り、レバレッジが許されるかどうかで投資の正解は全く異なるのだが問題文に指定がない。
場合分けして解答する必要がある。
解答
最もお金が増える投資の仕方は、
①レバレッジが許される場合
シャープレシオ最大であるA30%B70%にて、レバレッジ3.55倍で投資する
②レバレッジが許されない場合
最強の指標μ-σ^2/2最大であるA70%B30%にて、レバレッジなし(1倍)で投資する
何度も言うがこれ以外に正解はない。
「いや、20代ではリスク資産を、60代では安全資産をもっと増やすべきだ」
「ドルコスト平均法でAを積み立てればよい」
「初心者は安全資産多めで」
「リスク資産が暴落したときだけ買えばいい」
全部、投資が分かっていない人の戯言である。
効率的ポートフォリオ
効率的フロンティアのうち、シャープレシオ最大のポートフォリオを「効率的ポートフォリオ」と呼ぶ。
上の例でいうと、A30%B70%が効率的ポートフォリオということになる。
ちなみに最強の指標μ-σ^2/2最大のポートフォリオに名前がついていない。
学問的には大した意味のないポートフォリオなので仕方ないのかもしれないが、まともなレバレッジ商品が少ない現状を鑑みると絶対に必要だと思うのだが。