投資の正解

長期投資の正解は一つしかありません。

【重要公式1】μ-σ^2/2

これまでの復習

これまでに、以下のことを述べてきた。

・「リターン」だけでは投資判断ができない

・「リターン」「リスク」を合わせて判断する方法が最強である。

・しかし、それらを単純に割っただけの「シャープレシオ」は(特殊な条件下以外では)役に立たない。

 

ではどんな指標を用いれば、投資の最適解がわかるのだろうか。

 

答え:μ−σ^2/2

さきに答えから言ってしまうが、

μ−σ^2/2

である。μはリターン、σはリスクなので、

(リターン)ー(リスク)^2/2

 と書いてもよい。

 

投資の正解を判断するのに、

・「リターン」最大を選ぶのではない。

・「シャープレシオ」最大を選ぶのではない。

 

「μ−σ^2/2」最大を選ぶのだ。

 

 

投資の判断において、この式より大事なものはない。

大げさではなく、義務教育で教えるべき式である。

 

にも拘わらず、この式を知っている日本人が何人いるだろうか。

私が日本のマネー教育の低さを嘆く所以である。

 

 

「μ−σ^2/2」導出方法


では「μ−σ^2/2」はどうやって導くのでだろうか。一応記載する。

 

①ある瞬間tの価格Stは、ブラウン運動の式より

dSt=μStdt+σStdBt

となる。

②伊藤の公式を用いて①を解くと、St/S0は、exp((μ−σ^2/2)t)と導ける。

 

①を理解するのですら理系大学生なみの知識が求められ、②に至っては専門知識だ。

 

このブログに書かれていることのほとんどが中学生レベルの知識で理解できるが、

ここは無理である。

 

興味のある人はさらに調べてみるといいが、そうでない人は結果「μ−σ^2/2」だけ覚えておけばいい。

(本当はもう一つ、「②の計算過程で3次以降の項を0と近似しているため、σ^3の値が大きいほど誤差が大きくなる」点は覚えておいてほしい。意味が分からない人はまぁ無視しても大丈夫だ)

 

「μ−σ^2/2」が意味するもの

この式においても

・リターンμは大きいほどよい

・リスクσは小さいほどよい 

が表れていることがわかるだろう。

 

何より大事な性質は、「μ−σ^2/2」は幾何平均リターンと一致することである。

 

【基礎知識2】幾何平均リターン

にて「幾何平均リターンは(算術)平均リターンとリスクで表せる」と書いたがこのことである。

この式さえ知っていれば、幾何平均リターンが瞬時に求まるのだ。

 

 

「μ−σ^2/2」の計算例

 

\例えば投資対象Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

だった場合、この商品Aの4年間の

平均リターンμ:(40-30+30-40)/4=5%

幾何平均リターンは:(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1% 

 

リスクσ:(35%+35%+35%+35%)/4=35%

シャープレシオμ/σ:5%/35%≒0.14

であった。

 

では「μ−σ^2/2」を計算すると、5%-35%^2/2=-1.125%

となる。

 

幾何平均リターン-1%と「μ−σ^2/2」-1.125%が大変近いことがわかるだろう。

(σ35%が大きすぎるので、完全には一致しない)

 

ではシャープレシオはどういうときに使うのか

「μ−σ^2/2」最強なものが最もお金が増える投資戦略である、という説明をした。

 

しかし一般的にはシャープレシオがさも万能なように扱われている。

シャープレシオは一体どういうときに使うのだろうか。

 

実はレバレッジの有無によって「投資の正解」は異なる。

レバレッジなしならシャープレシオは無用。μ-σ^2/2のみを考えればいい。

レバレッジありならシャープレシオ最大のものに、最適レバレッジをかけたものが最強。

 

次ページ以降解説する。

【問題2】シャープレシオの嘘

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問題2

上の問題を解いてみて欲しい。

 

リスク資産はリターン5%リスク25%で、ハイリスク・ハイリターンな資産だ。

安定資産はリターン1.5%リスク2.5%で、ローリスク・ローリターンな資産だ。

ミドル資産はリターン3.5%リスク約9%で、ミドルリスク・ミドルリターンな資産だ。

 

どれか一つだけを100%全力買いするとしたら、どれが一番増えるお金の期待値が大きいだろうか?

 

平均リターンで選ぶなら

平均リターンで選ぶなら、リスク資産である。

1.5%、3.5%に比べ一番大きい5%となっている。

 

シャープレシオで選ぶなら

シャープレシオはそれぞれ

リスク資産:5%/25%=0.2

安定資産:1.5%/2.5%=0.6

ミドル資産:3.5%/8.99%≒0.39

 

従って、シャープレシオで選ぶなら圧倒的に安定資産ということになる。

 

正解は

しかし正解は、ミドル資産である。

 

 

実際に計算してみる

  リスク資産 安定資産 ミドル資産 リスク資産 安定資産 ミドル資産
リスク 25.00% 2.50% 8.99%      
平均リターン 5.00% 1.50% 3.50% 100 100 100
1年目 30% -1% 16.0% 130 99 116
2年目 -20% 4% -6.0% 104 102.96 109.04
3年目 -20% -1% 8.0% 83.2 101.9304 117.7632
4年目 30% 4% -4.0% 108.16 106.0076 113.0527

 では実際に、例を参考に4年目にそれぞれいくらになっているか計算していこう。

 

上の表の右3列を見てしい。

 

例えばリスク資産なら、

1年目:100万円×130%=  130万円

2年目:130万円×80%= 104万円

3年目:104万円×0.8%= 83.2万円

4年目:83.2万円×130%= 108.16万円

となり約108万円となる。

 

同様に安定資産なら約106万円、ミドル資産なら113万円となる。

 

注目してほしいこと

・平均リターンもリスクもシャープレシオも中途半端な、ミドル資産が圧勝。

・一方、平均リターンが全く異なるリスク資産(5%)と安定資産(1.5%)の利益が、そんなに変わらない(108万円と106万円)。ちなみにこの二つはシャープレシオも全く異なる(0.2と0.6)

シャープレシオ最強の安定資産が一番利益が少ない。

 

 

まとめ

いかがだっただろうか。

 

勉強不足の方は、平均リターン最強のリスク資産が一番でないことに驚いたであろう。

よく勉強されている方でも、シャープレシオ最強の安定資産が一番利益が少ないことに、驚いたのではないだろうか。

 

シャープレシオがいかに使えないかをわかっていただけたと思う。

 

 

ではシャープレシオが使えないのなら、どうやって投資判断をしたらいいのだろうか。

 

次ページより解説する。

 

この記事を読むのが2週目以降の方へ

シャープレシオは使えない、と書いたがこれは正確ではない。

 

正確には「ある条件があれば」確かにシャープレシオで選ぶべきなのだ。

しかしこの問題の場合、「その条件がない」ことが指定されている。

 

それは問題文の「100%全力買い」である。

 

多くの方がさほど気にも留めなかったであろうが、この条件がなければ答えは変わってくる。

100%。すなわち200%や300%は考慮してはいけない。つまり、レバレッジをかけてはいけないと指定されているのだ。

【基礎知識4】シャープレシオ

リターンは大きく、リスクは小さく

前回記事で、「リターン」「リスク」で投資商品の性質を一番よく表せることを記載した。

 

 

 

さて、それら二つの指標は、大きい方がいいのだろうか、小さい方がいいのだろうか。

 

リターンについてはいうまでもない、大きい方がいいだろう。得られるお金は多いに限る。

 

 

ではリスクはどうだろうか。

「通常の意味」でのリスクは小さい方がいい。悪いことが起こる確率は、小さいにこしたことはない。

 

しかしリスクの「金融での意味」は「ばらつきの大きさ」である。果たしてこれは大きい方がいいのか、小さい方がいいのか。

 

極端な例を考えてみよう。

例えば投資商品Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

である。この場合の平均リターンは5%であり、リスクは35%である。

 

次に投資商品Bのリターンが

 1年目:5%

 2年目:5%

 3年目:5%

 4年目:5%

であるとする。

どちらがよいだろうか。この場合も平均リターンは5%であるが、リスクは0%である。

 

 

幾何平均リターンを考えてみればお分かりだろう。

同じ平均リターンでも、

・リスク35%の投資商品Aの幾何平均リターンは-1%である。

・リスク0%の投資商品Bの幾何平均リターンは5%である。

 

すなわち、リスクは小さいほうがよいのだ。

 

 

シャープレシオ

リターンは大きい方がいい。

リスクは小さい方がいい。

 

このような関係の2指標を一つの指標で表したい場合、しばしば割り算が使われる。

 

つまり、二つをまとめて

リターン/リスクが大きい方がいい。

と記載できるのである。

 

このリターン/リスクのことをシャープレシオという。

 

 

シャープレシオの求め方

平均リターン求め方は大変単純で、

 ①全部足して

 ②足した個数で割る

とうものであった(小学生レベル)。

 

幾何平均リターンの求め方もそれほど難しくはなく、

 ①全部掛けて

 ②「1/掛けた個数」乗する

というものであった(中学生レベル)。

 

リスクの求め方もそれほど難しくはなく、

 「平均との差」の平均

というものであった(小学生レベル)。

 

シャープレシオの求め方は上で説明した通り最も簡単で、

 リターン/リスク

というものである(小学生レベル)。

 

例えば投資対象Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

だった場合、この商品Aの4年間の平均リターンは

(40-30+30-40)/4=5%

となったが、幾何平均リターンは

(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1%

となる。

 

そしてリスクを求めるにはまず平均リターン5%との差の大きさをそれぞれ

 1年目:35%

 2年目:35%

 3年目:35%

 4年目:35%

と求め、その平均

(35%+35%+35%+35%)/4=35%

と計算できる。

 

従ってシャープレシオは、

5%/35%≒0.14

と計算できる。

 

 

シャープレシオの嘘

シャープレシオについての基本的な解説を行ったが、平均リターンと同様、シャープレシオについても世間の理解が浅すぎる。

 

シャープレシオについて解説しているサイトをいくつか見たが、どれも「シャープレシオがよい投資商品を選びましょう」程度である。

 

正直、何もわかってないと言わざるを得ない。

 

その理解だと、「シャープレシオ最大の投資商品に消費すればいいのだ」としか解釈できない。

 

それで何人もの人が、バランスファンドなんかを購入してしまっている。

 

冗談じゃない。

シャープレシオ最大がベストなのは、ある特殊な条件が加わったときだ。

大抵の人はその条件を満たさないのだから、シャープレシオ最大を選んではいけないのである。

 

次ページ以降、詳しく解説する。

【基礎知識3】リスク

日常で使う「リスク」

普段、我々は「リスク」という言葉を「悪いことが起きる確率」という意味で用いる。

 

まずはこれを認識してほしい。

 

例えば「この手術には失敗のリスクがある」という使い方はするが、「この手術で治るリスクがある」とは言わない。

手術失敗は悪いことだが、治るのは悪いことではないからだ。

通常、「リスク」は悪いことにしか使わないのである。

 

さらに、「このままだと患者が明日死ぬリスクがある」という使い方はするが、「この死体はわずか数時間前に死んでいたリスクがある」とは言わない。

死んでいた、という過去にことに対してリスクという言葉は使わないからだ。

通常、「リスク」はまだ不確定な中で「悪いことが起きる確率」なので、未来のことにしか使わないのである。

 

 

「リスク」について誰も書かないこと

金融の話において「リスク」は、通常使う「リスク」とは全く違う意味で使われる。

同音意義語として、知らなかった単語として、新しく覚えるべきだ。

 

金融系の知識を解説したサイトで、リスクについて触れていないものはないが、誰もこのことを書いていない。

金融系の解説をしようとする人ですら、イマイチ頭が整理できていないのだろう。

 

だが日本人にこの認識がない弊害は大きい。

これが分かっている正しい人が、わかっていない知識不足に何かを説明しようとして徒労に終わる不幸な会話を何回も見てきた。

 

A「カキは海で採れる」

B「は?山だろ」

A「?」

 

という会話を見ると誰もが「あぁ柿と牡蠣を勘違いしてんだろうな」とわかるだろうが、

 

A「低金利の今、利子だけに頼るのはむしろリスクが高い。株式投資をしよう」

B「いや、利子のリスクは株より圧倒的に小さいでしょ」

A「は?」

 

というような会話はそこかしこで行われており、しかもどうして会話がかみ合わないのかわからない人が多い。

(ちなみにAはリスクを「通常の意味」で使っており、Bは「金融の意味」で使っている)

 

当然である。使っている単語の意味が違うのだから。

 

こういうと言語学者は反論するかもしれない。

「リスクという単語の語源は〇〇で、どちらの意味もそこから派生しているので同音意義とは言わない」などとのたまうかもしれない。

 

しかし学問的な正しさなど知ったこっちゃない。

 

金融の「リスク」と通常の「リスク」は違う単語。

こう認識した方が、絶対理解しやすい。

 

 

金融における「リスク」

というわけで皆様には新しい単語「リスク」を覚えていただきたい。

金融において「リスク」は、「標準偏差=ばらつきを表す指標」という意味で使われる。

 

「ここ20年の米国株の平均リターンは7%、リスクは20%だ」のように使う。

 

標準偏差には

平均±標準偏差に収まる確率は68%

平均±2*標準偏差に収まる確率は95%

平均±3*標準偏差に収まる確率は99.7%

という性質があるので、上記は

 

「ここ20年の米国株のリターンは

68%は-13%~+27%に収まっており、

95%は-33%~+47%に収まっており、

99%は-53%~+67%に収まっている

程度のばらつきである」

 

というような意味になる。

 

 

そこに「悪いこと」という意味は全くない。

そもそもいいとか悪いとか、主観が入るような余地のない言葉である。

 

そこに「(未来の)確率」という意味は全くない。

むしろ過去の状態を表す言葉である。

 

ここまで意味が違うので、別の単語として覚えるべきだと言っているのだ。

 

 

リスクの求め方

指標なので当然、計算で求められる。

 

平均リターン求め方は大変単純で、

 ①全部足して

 ②足した個数で割る

とうものであった(小学生レベル)。

 

幾何平均リターンの求め方もそれほど難しくはなく、

 ①全部掛けて

 ②「1/掛けた個数」乗する

というものであった(中学生レベル)。

 

リスクの求め方もそれほど難しくはなく、

 「平均との差」の平均

というものである(小学生レベル)。

 

例えば投資対象Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

だった場合、この商品Aの4年間の平均リターンは

(40-30+30-40)/4=5%

となったが、幾何平均リターンは

(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1%

となる。

 

そしてリスクを求めるにはまず平均リターン5%との差の大きさをそれぞれ

 1年目:35%

 2年目:35%

 3年目:35%

 4年目:35%

と求め、その平均

(35%+35%+35%+35%)/4=35%

と計算できる。

 

 

「リスク」を正しく使っているかでその人の知識レベルがわかる

金融系のサイトを読んでいても、リスクを間違った(=通常の意味で)使い方をしている例が散見される。

 

「投資には値下がりリスクがあるので注意しましょう」

などがその最たるもの。

「投資には【値下がりという悪いことがおきる確率】があるので注意しましょう」

という、金融の話なのに通常の意味でリスクという単語を使ってしまっている。

 

こういった人の情報は一切の価値がないと思った方がいい。

碌に勉強をしていない証拠である。

 

金融系のサイトで「リスク」という大事な単語を正しく使う程度の知能がない人の情報を読むのは、百害あって一利ない。

 

 

まとめ

くどいようだが金融の「リスク」は新しく覚えるべき新単語だ。

皆様も「リスク」という単語を見かけたとき、どちらの意味で使っているかを一々確認しながら読んでいただきたい。

なお、このブログで出てくる「リスク」は特記ない限り「金融の意味」で用いている。

 

 さて、リスクについてかなり詳しく解説した。

これで「平均リターン」「リスク」という、投資商品の性質を一番よく表せる2指標が揃った。

 

次ページ以降、これらをどう使うかについて解説する。

【基礎知識2】理想は幾何平均リターン

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幾何平均リターン

前ページにて、平均リターン単体では投資判断に糞の役にも立たないことを解説した。

 

肝は「期待通りの平均リターンで推移したとしても役に立たない」という点にある。

平均リターン5%の10年後が63%になったりー10%になったりするのだから当然である。

 

では単体で「期待通りに推移すれば役に立つ」数値はどんなものだろうか。

 

それが「幾何平均リターン」である。

 

 

幾何平均リターンの求め方

平均リターン求め方は大変単純で、

 ①全部足して

 ②足した個数で割る

とうものであった(小学生レベル)。

 

幾何平均リターンの求め方もそれほど難しくはなく、

 ①全部掛けて

 ②「1/掛けた個数」乗する

というものである(中学生レベル)。

 

例えば投資対象Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

だった場合、この商品Aの4年間の平均リターンは

(40-30+30-40)/4=5%

となったが、幾何平均リターンは

(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1%

となる。

 

平均リターンよりもよっぽど正確に、投資商品Aの性質を表せているのがわかるだろう。

 

なお、幾何平均リターンと区別するために、平均リターンのことを算術平均リターンと呼ぶこともある。

 

なぜ幾何平均リターンは使われないのか

平均リターンより正確に、投資商品の性質を表すことができる幾何平均リターンであるが、まず見かけることはない。

 

どんな投資商品でも、「リターン」と書いてあればそれは幾何平均リターンではなく(算術)平均リターンである。

 

なぜか。

 

確かに幾何平均リターンは「単体では」最も優秀な指標だが、

・(算術)平均リターン

・リスク

この「二つの」指標と比べると完全に下位互換だからである。

 

つまり、幾何平均リターンは(算術)平均リターンとリスクで表せるが、逆は不可能である。

 

では次にリスクについてみていこう。

 

【基礎知識1】平均リターンの詐欺

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平均リターンとは

投資における「リターン」は投資収益(または投資収益率)と呼ばれ、「リターンはいくら(○○円)」「リターンは何%(○○%)」という使われ方をする。

 

 

平均リターンの求め方

求め方は大変単純で、

 ①全部足して

 ②足した個数で割る

とうもの。

その名の通り、リターンの平均を取っているだけである。

 

例えば投資対象Aのリターンが

 1年目:40%

 2年目:ー30%

 3年目:40%

 4年目:ー30%

だった場合、この商品Aの4年間の平均リターンは

(40-30+30-40)/4=5%

となる。

 

 

平均リターンの罠1

さて我が国の教育の大きな欠陥の一つに、学校教育で一切のマネー教育を行わないということが挙げられる。

 

このため日本国の若者は、投資に興味を持った際に、一切の基礎知識なく投資商品を選ばなくてはならない。

 

その乏しい判断要素の中で唯一理解できそうな数値が、この「平均リターン」である。

 

その名前から、「きっと平均リターンが最も大きいものが、最も期待値が高いのだろう」と思い込んでしまう。

 

まずはこれがとんでもない誤解であるということを、ご理解いただこう。

 

投資商品Aの正体

実際に、100万円をAに投資したと想定し、期待通りの挙動を示したとしよう。

つまりよくもなく悪くもなく、

1年目は+40%

2年目はー30%

だったとき、2年後に100万円がいくらになるのか計算してみよう。

 

1年目は100万円の+40%→140万円

である。

2年目は140万円のー30%→98万円

である。

 

 

 

・・・おわかりだろうか。

 

 

投資先Aは100万円が、98万円になるのである。

平均リターン5%の投資先が期待通りの挙動をした場合、お金が減るのだ。

 

 

さらっと言ったが必ず自分で計算してほしい。

 

逆パターン、すなわち

1年目はー30%

2年目は+40%

の場合も計算してみるといい。同じく98万円になる。

 

自分で計算して、どこにも誤魔化しがないと腑に落ちたとき、目から鱗が落ちる思いをすることだろう。

 

 

減るのだ。

 

平均リターン+5%の投資先に投資したのに、お金はどんどん減ってゆくのだ。

 

もちろんこの投資商品Aは架空のものであり、実際にこのような投資商品は存在しない。

しかし、平均リターンで投資判断を行うことの愚かしさは、十分わかっていただけたことと思う。

 

 

平均リターンの罠2

また平均リターンの大きな欠点として、

「その投資商品に10年投資したらいくらくらいになりそうか?」

ということが分からない点を挙げたい。

 

平均リターン5%の投資商品を10年保持したとして、いくらくらいになるのだろうか。

 

「5%×10=50%増えるんでしょ」

などと考える本当の無知は無視するとして、

大多数の人は

複利くらい理解している。1.05の10乗を計算して約63%増えますな」

などと平然と間違ったことをのたまう。

 

 

投資商品Aは、10年後に「-10%」となる。
こんな数字は投資商品Aの「平均リターン5%」から全く想像がつかない。

 

一方、定期預金の平均リターン(利子)が5%というのなら、「約63%増える」が正解となる。

 

 

「平均リターン5%の投資商品を10年保持したとして、いくらくらいになるのだろうか。」

という問いの正解はただ一つ、「情報が足りないので答えられない」である。

 

 

平均リターンだけで投資先を選んではいけない

平均リターンが5%で、運よくも悪くもなく価格が推移しても、利益がマイナスになりうることを示した。

 

これが平均リターンの詐欺だ。

 

平均リターン単体で投資商品を比較してはいけないのである。

 

 では単体で投資商品を比較するとしたら、どのような数値を使えばよいのだろうか。

次ページで解説する。

【問題1】投資の正解は一つ

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問題1

 

上の問題を解いてみて欲しい。

 

単純な問題だ。

でも正解できる人は1%もいないと思う。

 

この記事を読めばきっと、「投資の正解は一つ」の意味が分かるはずだ。

 

 

A?

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90%の人はこう答えるだろう。

 

Aである、と。

有り金全てをAにぶち込めばよいのだ、と。

 

なぜなら平均リターンが高いからだ。

Aの平均リターン:(40%-30%+40%-30%)/4  =20%/4  = +5%

Bの平均リターン:(0.5%+0.5%+0.5%+0.5%)/4  =2%/4=  +0.5%

確かに、平均リターンはAの方が10倍も高い。

 

大間違いである。

致命的な間違いだ。

それを選ぶと、お金は減り続ける。

 

 

B?

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 数学的センスのある人は、ちょっと計算してみることだろう。

 

するととんでもないことに気づく。

 

A、時間が経つば経つほどお金が減っていく。

 

「ならBだ。Aがゴミなのだから、Bに全額ぶち込めばよい」

 

ここが、センスの限界だ。

センスだけではこれが正解だと思ってしまう。

 

B100%も不正解。

勉強をしないと、正解にはたどり着けないのである。

 

 

正解は・・・

正解は「A40%B60%のポートフォリオを組む」である。

(当然、適切なリバランスは必須)

 

あなたはどこに驚いただろうか。

お金が減っていくはずのAを使うことだろうか。それとも40%という数字の根拠だろうか。

 

そしてこう思っていることだろう、「そんなわけないだろう」と。

 

下の図の中央付近を見てほしい。

実際に100万円を

①A100%

②B100%

③A40%B60%

で投資してみたときの4年後の資産を計算してある。

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例えば①なら、

1年目:100万円×140%=  140万円

2年目:140万円×70%= 98万円

3年目:98万円×140%= 68.6万円

4年目:68.6万円×70%= 96万円

 

②の計算も、電卓でも使えば簡単である。

(0.5%と小さいため、複利の効果は四捨五入で消えてしまうほど小さい)

 

③の計算は電卓でもめんどくさい。Excelで確かめてみることをお勧めする。

 

計算してみると確かに、

・A100%はマイナス4万円。

・B100%はプラス2万円。

・A40%B60%はプラス5.5万円!

となり、③が一番お金が増える。

 

 

まとめ

いかがだっただろうか。

 

多分、直観と答えが違い過ぎてまだ納得できていない人が多いと思う。

 

これはもう実際に計算してみるしかない。

ちなみにAの例の4年間のリターンはどんな順番でもよい。答えは「A40%B60%のポートフォリオを組む」である。

 

99%の人は、どうやってこれを導くのか見当もつかないだろう。

次ページより、体系的に説明する。

 

 

この記事を読むのが2週目以降の方へ

・最適レバレッジを40%としているが、理論値は41%の方が近い。

・さらに、実際に計算してみると、本当にお金が一番増えるのは40%でなく38.5%くらいである。

 理論値の公式を導く過程で3次以上の項を0とみなす工程があるのだが、本例のリスク35%は3乗しても4.3%程度であり無視できる数値ではない。

 これによって理論値41%と正解38.5%で1割近くもずれたものと思われる。

・そもそもリスクとリターンの予測値と実際の値はそれ以上にぶれるものなので、正確に求まるものと思わないこと。理論値が41%と計算されたなら、「まぁ30%~50%のどこかが正解なんだろうな」くらいに捉えること。