これまでの復習
これまでに、以下のことを述べてきた。
・「リターン」だけでは投資判断ができない
・「リターン」「リスク」を合わせて判断する方法が最強である。
・しかし、それらを単純に割っただけの「シャープレシオ」は(特殊な条件下以外では)役に立たない。
ではどんな指標を用いれば、投資の最適解がわかるのだろうか。
答え:μ−σ^2/2
さきに答えから言ってしまうが、
である。μはリターン、σはリスクなので、
と書いてもよい。
投資の正解を判断するのに、
・「リターン」最大を選ぶのではない。
・「シャープレシオ」最大を選ぶのではない。
最大を選ぶのだ。
投資の判断において、この式より大事なものはない。
大げさではなく、義務教育で教えるべき式である。
にも拘わらず、この式を知っている日本人が何人いるだろうか。
私が日本のマネー教育の低さを嘆く所以である。
「μ−σ^2/2」導出方法
でははどうやって導くのでだろうか。一応記載する。
①ある瞬間tの価格Stは、ブラウン運動の式より
dSt=μStdt+σStdBt
となる。
②伊藤の公式を用いて①を解くと、St/S0は、と導ける。
①を理解するのですら理系大学生なみの知識が求められ、②に至っては専門知識だ。
このブログに書かれていることのほとんどが中学生レベルの知識で理解できるが、
ここは無理である。
興味のある人はさらに調べてみるといいが、そうでない人は結果だけ覚えておけばいい。
(本当はもう一つ、「②の計算過程で3次以降の項を0と近似しているため、の値が大きいほど誤差が大きくなる」点は覚えておいてほしい。意味が分からない人はまぁ無視しても大丈夫だ)
「μ−σ^2/2」が意味するもの
この式においても
・リターンμは大きいほどよい
・リスクσは小さいほどよい
が表れていることがわかるだろう。
何より大事な性質は、は幾何平均リターンと一致することである。
【基礎知識2】幾何平均リターン
にて「幾何平均リターンは(算術)平均リターンとリスクで表せる」と書いたがこのことである。
この式さえ知っていれば、幾何平均リターンが瞬時に求まるのだ。
「μ−σ^2/2」の計算例
\例えば投資対象Aのリターンが
1年目:40%
2年目:ー30%
3年目:40%
4年目:ー30%
だった場合、この商品Aの4年間の
平均リターンμ:(40-30+30-40)/4=5%
幾何平均リターンは:(1.4*0.7*1.4*0.7)^(1/4)=-1%
リスクσ:(35%+35%+35%+35%)/4=35%
シャープレシオμ/σ:5%/35%≒0.14
であった。
ではを計算すると、5%-35%^2/2=-1.125%
となる。
幾何平均リターン-1%と-1.125%が大変近いことがわかるだろう。
(σ35%が大きすぎるので、完全には一致しない)
ではシャープレシオはどういうときに使うのか
最強なものが最もお金が増える投資戦略である、という説明をした。
しかし一般的にはシャープレシオがさも万能なように扱われている。
シャープレシオは一体どういうときに使うのだろうか。
実はレバレッジの有無によって「投資の正解」は異なる。
・レバレッジなしならシャープレシオは無用。μ-σ^2/2のみを考えればいい。
・レバレッジありならシャープレシオ最大のものに、最適レバレッジをかけたものが最強。
次ページ以降解説する。