投資の正解

長期投資の正解は一つしかありません。

【結論】投資の正解

 

前ページにて、

①全世界債券:全世界株式:金=2:1:0.1(レバレッジ可なら)

②全世界債券:全世界株式:金=1:9:微

このいずれかが投資の正解であることを確認した。

 

ここまでは理論の話で、今後何十年も変わることはない。

 

 

次は実践の話。

ここからはあくまで現時点で話でしかないことに留意すること。

 

現時点で最良の商品でも、今後、より理論に近い投資商品が出てくればそちらに鞍替えしなければならない。

 

このブログでも随時追っていくが、理論を理解した皆様なら自分でも判断できるはずである。

 

長期投資失敗の唯一の要因

基本的に、長期投資をしていて失敗、つまりマイナスで終わるようなことはあり得ない。

 

それは、私がギャンブルと呼ぶ投資の仕方をしている人も同等である。

例えば米国株のインデックスに投資をしても、最良の投資手法に勝てない可能性が高いだけで、基本的にはプラスになるはずである。

実際、バブル絶頂期という最悪の時期に日本株全力という最悪の投資を始めた人も、その後積み立てをやめなければプラスになっている。

 

しかし、長期投資を失敗たらしめる行動が一つだけある。

 

下がったときに、狼狽売りをしたり、積立をやめたりしてしまうことだ。

 

いくら最良の投資手法を選んだとて、下がるときは下がる。

半値とまではいかずとも、ー40%は覚悟しておく必要がある。

 

そのときのチャートを後から見た人はこう思う。

「ここで買ったら楽勝じゃん」と。

 

しかし実際投資していて初めて暴落に遭遇したときに思うのは、

「もっと下がるかもしれない」だ。

 

毎日毎日マイナスを更新し続ける自分の資産に、平常心でいられる人は少ない。

だから、「長期投資は簡単」などという人は正直何もわかっていない思う。

長期投資のこのストレスに耐えられる人は、意外と多くないはずだ。

 

リバランスのストレス

だから私はリバランスの恐ろしさにももっと敏感になるべきだと思っている。

 

複数の資産を組み合わせるなら、リバランスは必須である。

 

リバランスの適正頻度に理論的な解はないが、様々な研究を読むに年1,2回が適正であるようだ。

 

つまり、リバランスが必要な長期投資を成功させるためには

・年1,2回のリバランスを忘れない程度には意識しつつ

・暴落してもストレスを感じてしまう程度には意識してはいけない

という曲芸が求められる。

 

そんなことが多くの人間に可能だろうか。

私は難しいと思う。

 

 

②全世界債券:全世界株式:金=1:9:微

理論上は、債券を1割弱組むのが最強の指標μ-σ^2/2最大となる。

全世界株式100%はわずかに及ばない。

 

しかしこの比率を一つで実現するような投資商品が存在しない以上、自分でポートフォリオを組み、リバランスする必要がある。

 

そう、リバランスをする必要があるのだ。

リバランスがあって100点の投資方法よりも、リバランスなしで99点の投資方法の方が私はよいと考える。

 

もちろん差が大きいのであればリバランスありの100点を追い求めるしかないが、

債券を1割入れるかどうかでμ-σ^2/2はわずかしか違わない。

 

この程度であれば、私は全世界株式100%をお勧めする。

 

さて、こうなると話は簡単で、あとは一番費用の安い全世界株式インデックスファンドを積立るだけだ。

 

現在、費用が一番安いのは

・SBIインデックス全世界株式(実質コスト0.13%)

であり、それが買えない証券会社であれば

eMAXIS slim全世界株式(実質コスト0.2%)

の二択である。

(どちらも買えないのであれば、買える証券会社に口座開設すべきである)

 

これらどちらかを、100%で積み立てる。

これが、投資の正解である。

 

 

①全世界債券:全世界株式:金=2:1:0.1

長らく、②だけが投資の正解であった。

 

理論上は①の方が期待値が高いのに、個人ではレバレッジがかけられないせいで実現できなかったからだ。

 

しかし、2019年と2020年に、②足りうる商品がいくつか登場した。

代表的なのが以下の二つである。

 

②に比べμ-σ^2/2が高い①に近いことが特徴であるが、どちらも理想とは異なる。

 

・グローバル3倍3分法ファンド

 理想との違い

  A:金が含まれていない

  B:全世界債券が恣意的。日本・米国・ドイツ・イギリス・豪州が等配分となっており、時価総額加重平均になっていない。

 

・グローバル5.5倍バランスファンド

  C:債券比率が高すぎ(全体の約78%)。もう少し世界株式に振るべきだった。

  D:コストがちょっと高い。SBIインデックス全世界株式の実質コスト0.13%に5.5倍は0.715なのに、1.089%もかかる。

 

このうち欠点Bは致命的である。

しかし他の欠点は、②に対する①の圧倒的な優位性を覆すほどのものではない。

 

従って、現状最も期待値が高い投資方法は「グローバル5.5倍バランスファンド」100%である。

 

 

結論

投資の正解は「グローバル5.5倍バランスファンド」100%である。

 

しかし、欠点CDをどう見積もるかにもよる。②に対する①の優位性を覆すほどのものだと考える人は、「SBIインデックス全世界株式」100%が正解となる。

 

この2択以外は全て、ギャンブルである。投資ではない。

 

【最終問題】では投資の正解は?

最終問題

 

投資の正解は何だろうか。

 

 

解答

さて。いよいよこの問題を解くときがきた。

 

理論は理解したであろう。

理論上、投資の正解は一つである。

 しかし、この前提条件はあくまで推測なので、統一の答えにはならない。

 

なぜならば、前のページで述べたように、

・最強の指標μ-σ^2/2最大の点は、

  ①各資産のリターン・リスク・相関係数から求める方法

 がある。

シャープレシオ最大の点は、

  ①各資産のリターン・リスク・相関係数から求める方法

  ②時価総額加重平均から求める方法

 の二通りの方法があるのだが、今後数十年のリターン・リスク・相関係数は誰にもわからない。

 

従って、ここから先の解き方には個人差が出てくる。

 

解き方1

過去20年くらいのデータから求め、どちらも①にて計算する方法がある。

 

調べてもらってみればわかるがこれまで20年ほどは、日本債券と他の資産との相関係数が圧倒的に低かった。

他の資産同士の相関係数は、低くても0.2ほどである。

しかし日本債券は、他のほぼ全ての資産に対し-0.2という驚異的な数値を叩き出している。

 

こうなると様々な資産でどう①を計算しても、

「最もハイリスクハイリターンな資産(米国株か途上国株かREIT)と日本債券との組み合わせ」

に勝てるものはなく、

・最強の指標μ-σ^2/2最大:日本債券を10~20%、残りをハイリスク資産

シャープレシオ最大:日本債券を70~90%、残りをハイリスク資産

という答えになる。

 

そして日本債券をまともな手数料でレバレッジがかけられる商品が現状ないので、下は選べない。

 

従って、「日本債券を10~20%、残りをハイリスク資産」が答えとなる。

 

 

これでもよいのかもしれない。

しかし、「過去の傾向は未来にわたっても同じである」という前提に立っている。

日本債券が今後数十年に渡ってこんな異常に低い相関係数で推移するかどうかわからないので、個人的にはお勧めしない。

 

 

解き方2

そこでまず、比較的属人性の小さい②を使ってシャープレシオ最大の点を求めてみる。

 

債券市場は2京円弱

株式市場は1京円強

金市場は1000兆円    と推定されている。

 

次に時価総額の大きな資産は銀・仮想通貨・REITの200兆円となっており、債券市場に比べてあまりに額が小さいので無視する。

 

従って、

全世界債券:全世界株式:金=2:1:0.1

シャープレシオ最大のポートフォリオである。

なお、最適レバレッジを計算すると4~5倍程度となる。

 

なお3資産いずれも、2019年まではまともな手数料でレバレッジがかけられる商品がなかった。2019年および2020年に、これに近い投資商品が販売開始されているのでこれも答えの一つとする。

 

 

そして「この3資産に限っては、市場規模が大きいのでリスク・リターン・相関係数の傾向は変わらないだろう」という仮定のもと計算すると、

全世界債券:全世界株式:金=1:9:微

が最強の指標μ-σ^2/2最大のポートフォリオである。

 

 

まとめ

以上より、投資の正解となる考え方が導けた。

 

解き方1→ 日本債券を10~20%、残りをハイリスク資産(おすすめしない

解き方2→ 全世界債券:全世界株式:金=2:1:0.1(レバレッジ可なら)

      全世界債券:全世界株式:金=1:9:微

 

次、とうとう投資の正解ズバリを解説する。

【問題5】なぜインデックスファンドは最強か

問題5

(1)株式市場全体の効率的フロンティアはどのようになっているだろうか。

(2)また、インデックスファンドはどこに位置するであろうか。

 

3資産の効率的フロンティア

大変単純な問題である。

 

前ページまでで、

・2つの金融商品の比率を変えたポートフォリオのリスク・リターンを線で繋ぐと曲線になる。

・その曲線を効率的フロンティアという

ことを学習した。

 

では3つ以上の効率的フロンティアはどのようなものになるのか。

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https://from0investment.hatenablog.com/entry/2019/08/19/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%82%AA%E7%90%86%E8%AB%961_%3A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%A8%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%82%AA

上の図を見てほしい。赤い3点が3つの資産のリスク・リターンだ。

 

そのうち2つを使っても効率的フロンティアが描けるが、3つ使った方がさらに左に膨らんだ曲線の効率的フロンティアが描けるのがわかるだろう。

すなわち同じリスクで得られるリターンが大きくなるのである。

 

 

市場全体の効率的フロンティア

では次に3つより多い資産、例えば日本市場には4000社近い企業が上場しているが、それらすべてを使った効率的フロンティアはどのようになるのだろうか。

 

 

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http://www.investlife.jp/img/IL201606_okamoto_PortTheory2.pdf に注記

 

上図からわかる通り、やはり曲線として描けるのである。

 

 

さて、このうち

シャープレシオ最大の点X(効率的ポートフォリオ

・最強の指標μ-σ^2/2最大である点Y

がこの効率的フロンティア上に存在する。

 

この点X(効率的ポートフォリオ)と、時価総額加重平均は一致するという性質がある。

 

この証明は大変難しい。

このブログに書かれていることのほとんどが中学生レベルの知識で理解できるが、

ここは無理である。

 

興味がある人はwikipediaにもあるので調べてみてほしい。

 

 

さて、ここで覚えておいてほしい点がある。

・最強の指標μ-σ^2/2最大の点は、

  ①各資産のリターン・リスク・相関係数から求める方法

 がある。

シャープレシオ最大の点は、

  ①各資産のリターン・リスク・相関係数から求める方法

  ②時価総額加重平均から求める方法

 の二通りの方法がある。

 

 

時価総額加重平均

市場全体の株価を表す指標には、

株価平均型の株価指数

時価総額加重平均型の株価指数

の2種類がある。

 

株価平均型は、文字通り単純に株価を基に計算(平均)しただけなので、やたらと株価が動くいわゆる小型株の影響を受けやすい。

 

時価総額加重平均型は、時価総額基に計算したものなので、時価総額が大きい大型株の影響を受けやすい。

 

日本株式市場でいえば日経平均は①にあたり、TOPIXは②にあたる。

 

 

インデックスファンドの種類

市場全体の株価を表す指標に二種類あるため、それに追随するよう設計されたインデックスファンドがそれぞれ存在する。

 

しかし、上で説明した通り、時価総額加重平均型の株価指数を構成するポートフォリオは、シャープレシオ最大なのである。

 

従って、

時価総額加重平均型の株価指数に追随するようなインデックスファンドは投資の選択肢となりうる

・株価平均型の株価指数に追随するようなインデックスファンドは投資の選択肢とならない

 

 

解答

ということで問題5の解答としては、

(1)上図のような効率的フロンティアになる

(2)効率的フロンティアの中でシャープレシオ最大の点が、時価総額加重平均型インデックスファンドと一致する。

(株価平均型のインデックスファンドはどこか知らないが、投資効率の点で時価総額加重平均型インデックスの下位互換なので気にする必要がない)

となる。

 

 

 

時価総額加重平均型)インデックスファンドが個別株に比べて最強の理由

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【事実1】

上の図を見ていただければわかるが、個別株をどのような銘柄をどのような比率で組み合わせても、インデックスファンドにシャープレシオで勝てないことが証明されている。

【事実2】

最強の指標μ-σ^2/2でインデックスファンドに勝てるポートフォリオが本当に少数(点Yなど)存在するはずだが、それがどのようなものかは誰もわからない。

 

これまでの説明から、事実1,2を確認してほしい。

 

事実2がある以上、インデックスファンドに期待値で勝てるポートフォリオを組むのはほぼ不可能と思っていい。

 

このような状況下で、あえて個別株を購入する必要があるだろうか。

 

期待値は劣るのに、自分だけは高いリターンを得られると思うのなら、それは投資ではなくギャンブルである。

 

 

全世界か特定の国(米国など)か

全世界株に投資するのがいいのか、世界経済の中心である米国株に投資するのがいいのか。

 

これもこのページで説明した話を拡張すると、すぐにわかる話である。

どちらもμ-σ^2/2最大のポートフォリオはわからないので、シャープレシオを比較すると、

 

全世界の株式の時価総額加重平均したもののポートフォリオ

>米国だけの株式の時価総額加重平均したもののポートフォリオ

 

となる。

 

理論的には全世界株式のインデックスファンドを選ぶ方が期待値が高いのだ。

 

ここ10年の米国株の伸びは凄まじかった。

だから、「全世界株ではなく成長著しい米国株に投資すべきだ」などという風説にみんな騙される。

 

期待値で考えよう。

また、そもそもその前の10年はBRICSや中国の伸びによって米国株は全世界株に惨敗していることを忘れてはならない。

 

何度も言うが理論的には全世界株式のインデックスファンドを選ぶ方が期待値が高い。

それでも米国株を選んだ方が高いリターンを得られると思うのなら、それは投資ではなくギャンブルである。

【応用知識2】効率的フロンティアと効率的ポートフォリオ

問題4を解いていこう

前記事で述べたように、問題4を一瞬で解ける公式など存在しない。

 

地道に一つずつ計算していこう。

 

もちろん計算量が膨大なので、基本的にエクセルで一気に計算したい。

Excelを使い慣れていない人はそれすらも難しいと思うので、この記事を追って確認してほしい。

 

  A B 0.1
リスク 25% 6.26%  
平均リターン 5% 0.75%  
1年目 30% -5% =30%*0.1-5%*0.9
2年目 -20% 10%  
3年目 -20% -5%  
4年目 30% 3%  

 

まずはAが0.1(当然Bは0.9)の場合、

1年目のリターン:30%*0.1-5%*0.9=-1.5%

となる。

 

2~4年目も同様に計算すると、以下のようになる。

  A B  0.1
リスク 25% 6.26%  
平均リターン 5% 0.75%  
1年目 30% -5% -1.5%
2年目 -20% 10% 7.0%
3年目 -20% -5% -6.5%
4年目 30% 3% 5.7%

 

次に4年間のリスクと平均リターンを計算する。

 

リスクは標準偏差なのでSTDEV.P関数、平均リターンは文字通り平均なのでaverage関数を使えばよい。

  A B 0.1
リスク 25% 6.26% 5%
平均リターン 5% 0.75% 1.2%
1年目 30% -5% -1.5%
2年目 -20% 10% 7.0%
3年目 -20% -5% -6.5%
4年目 30% 3% 5.7%

 

大変簡単である。あとはこれをBが0.2、0.3、・・・0.9まで計算すればよい。

  A B 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
リスク 25% 6.26% 5% 6% 8% 10% 12% 15% 17% 20% 22%
平均リターン 5% 0.75% 1.2% 1.6% 2.0% 2.5% 2.9% 3.3% 3.7% 4.2% 4.6%
1年目 30% -5% -1.5% 2.0% 5.5% 9.0% 12.5% 16.0% 19.5% 23.0% 26.5%
2年目 -20% 10% 7.0% 4.0% 1.0% -2.0% -5.0% -8.0% -11.0% -14.0% -17.0%
3年目 -20% -5% -6.5% -8.0% -9.5% -11.0% -12.5% -14.0% -15.5% -17.0% -18.5%
4年目 30% 3% 5.7% 8.4% 11.1% 13.8% 16.5% 19.2% 21.9% 24.6% 27.3%

 

 

効率的フロンティア

さて、上表の上3行に注目しよう。諸事情によりちょっと順番を入れ替える。

  B 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 A
リスク 6.26% 5.49% 6.01% 7.55% 9.65% 12.01% 14.50% 17.07% 19.69% 22.33% 25.00%
平均リターン 0.75% 1.18% 1.60% 2.03% 2.45% 2.88% 3.30% 3.73% 4.15% 4.58% 5.00%

これをグラフにとってみる。

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AとBの比率によって、このような曲線を描いている。

これを(AとBの)効率的フロンティアという。

 

 

ちなみに問題4を解く上で効率的フロンティアのグラフは役に立たない。

これがわかっていないと次ページの話がわからないから提示しただけである。。

 

しかしよく観察するといろいろなことがわかるだろう。

 

例えば「B100%に投資する意味がない」など。

B100%と同等のリスク(6%強)で、A20%B80%にリターンで勝てない(1.6%と0.75%)のである。

 

効率的フロンティアの性質

見ての通り、相関係数が1でない二つの投資商品でポートフォリオを組むと、リスク・リターンは直線で変化するわけではない。効率的フロンティアという曲線で変化する。

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https://ameblo.jp/metros/entry-10621994711.html

ちなみに上図にて示されるように、

相関係数が1のときは、効率的フロンティアは証券Aと証券Bを直線で結ぶ線となる。

相関係数が小さくなるにしたがって、効率的フロンティアは左に膨らむ。すなわち同じリターンを狙う場合でも、小さいリスクで実現できる。

相関係数がー1、すなわち証券Aがプラスなら証券Bは常にマイナス、という状態(でかつ証券A,Bともにリターンがプラス)なら、リスク0でリターンだけを享受できる。ちなみに現実にはそんな組み合わせは存在しない。

 

 

これが分散投資の本当の効果である。

 

投資をわかっていない人がよく言う「卵は同じカゴに入れるな」とかそういう浅い話ではないのだ。

 

異なる投資商品であっても、相関係数が1に近ければそれは「同じカゴに入れている」のと同じ状態なのである。

 

 

問題4の答えは

それでは問題4の答えを解いていこう。

といっても、上の表でそれぞれのポートフォリオのリスク・リターンを計算したのであとは簡単である。

  B 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 A
リスク 6.26% 5.49% 6.01% 7.55% 9.65% 12.01% 14.50% 17.07% 19.69% 22.33% 25.00%
平均リターン 0.75% 1.18% 1.60% 2.03% 2.45% 2.88% 3.30% 3.73% 4.15% 4.58% 5.00%
  μ-σ^2/2 0.55% 1.02% 1.42% 1.74% 1.98% 2.15% 2.25% 2.27% 2.21% 2.08% 1.88%
  シャープレシオ 0.120 0.214 0.266 0.268 0.254 0.239 0.228 0.218 0.211 0.205 0.200
  最適レバレッジ 1.91 3.90 4.43 3.55 2.63 1.99 1.57 1.28 1.07 0.92 0.80

さてすでに説明した通り、レバレッジが許されるかどうかで投資の正解は全く異なるのだが問題文に指定がない。

場合分けして解答する必要がある。

 

解答

最もお金が増える投資の仕方は、

レバレッジが許される場合

シャープレシオ最大であるA30%B70%にて、レバレッジ3.55倍で投資する

レバレッジが許されない場合

最強の指標μ-σ^2/2最大であるA70%B30%にて、レバレッジなし(1倍)で投資する

 

何度も言うがこれ以外に正解はない。

 

「いや、20代ではリスク資産を、60代では安全資産をもっと増やすべきだ」

ドルコスト平均法でAを積み立てればよい」

「初心者は安全資産多めで」

「リスク資産が暴落したときだけ買えばいい」

 

全部、投資が分かっていない人の戯言である。

 

 

効率的ポートフォリオ

効率的フロンティアのうち、シャープレシオ最大のポートフォリオを「効率的ポートフォリオ」と呼ぶ。

 

上の例でいうと、A30%B70%が効率的ポートフォリオということになる。

 

ちなみに最強の指標μ-σ^2/2最大のポートフォリオに名前がついていない。

学問的には大した意味のないポートフォリオなので仕方ないのかもしれないが、まともなレバレッジ商品が少ない現状を鑑みると絶対に必要だと思うのだが。

【問題4】有効フロンティア と 【応用知識1】相関係数

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問題3

上の問題を解いてみて欲しい。

 

Aはリターン5%リスク25%。

Bはリターン6.26%リスク0.75%。

 

相関係数は-0.28である。

 

これら2つの投資商品しかないとして、どのように投資すれば最もお金が増えるだろうか。

 

 

これまでの知識だけで解いてしまうと・・・

まず、双方の最適レバレッジを計算しようとしてみる。

最適レバレッジ「μ/σ^2」、すなわち(リターン)/(リスク)^2なので、

Aの最適レバレッジ:5%/25%^2=0.8

Bの最適レバレッジ:0.75%/6.26%^2=3.9

 

ではAを0.8倍、Bを3.9倍が正解か?

 

否である。

 

本問題の場合、相関係数は-0.28とかなり低い。

相関係数が低い場合、

・Aの割合をさらに高めて

レバレッジも3.9倍より大きくかけて

リターンを追い求めることができるのである。

 

ちなみにこれまでの問題とは違い、この問題には一瞬で解けるような公式はない。

A、Bの比率を変えたときのそれぞれのリスク・リターンを計算してみるしかない。

 

その前に、相関係数について少し触れておこう

 

 

相関係数とは

相関係数とは、2つのデータの関係の強弱を測る指標であり、−1以上1以下の実数で表される。

相関係数が正のとき確率変数には正の相関が、負のとき確率変数には負の相関があるという。

 

つまり2つの投資商品のリターンの相関係数0以上のとき、片方のリターンが正ならもう片方もになりやすい、ということである。

逆に2つの投資商品のリターンの相関係数0以下のとき、片方のリターンが正ならもう片方はになりやすい、ということである。

 

 

相関係数を求める式もあるのだが、投資判断において相関係数の数値そのものは計算に不要なので割愛する。

 

とにかく、「相関係数が1に近いと同じような動き、ー1に近いと反対の動きをする」ということだけ覚えておいてほしい。

 

 

まとめ

次ページでは問題4の答えを探すべく、A、Bの比率を変えたときのそれぞれのリスク・リターンを計算していく。

 

【重要公式2】μ/σ^2

最適レバレッジ

重要公式1で、最強の指標「μ−σ^2/2」について述べた。

 

では、一番お金が増える最適なレバレッジはいくらだろうか。

 

実は「μ−σ^2/2」から簡単に(中学生レベルの知識で)求めることができるので、ぜひ一度自分で考えてみてほしい。

 

ヒントとして、レバレッジL倍したときの平均リターンはL×μ、リスクはL×σとなる。

 

 

最適レバレッジは「μ/σ^2」

この問題を学校の問題風に書き換えると以下のようになる。

 

Lの関数f(L)=Lμ-(Lσ)^2/2

を最大にするLと、そのときのf(L)を求めよ。

 

もはや中学校1年生の数学の問題だ。平方完成という解き方を覚えていれば簡単である。

 

f(L) = -σ^2/2*L^2+μ*L = -σ^2/2(L-μ/σ^2)^2+1/2*(μ/σ)^2

 

従って答えは

「L=μ/σ^2の時、f(L)は最大値1/2*(μ/σ)^2をとる」

である。

 

 

「L=μ/σ^2の時、f(L)は最大値1/2*(μ/σ)^2をとる」が意味するもの

これにより、最もお金が増える最適レバレッジLはμ/σ^2となることが示された。

 

注目すべきはそのときの最大値1/2*(μ/σ)^2である。

μ/σ、すなわちシャープレシオが出てきている。

 

これがシャープレシオ最強説の起源である。

 

シャープレシオ最大の投資商品に最適レバレッジμ/σ^2倍投資すれば、レバレッジが許されるのであればシャープレシオが最大のものが利益1/2*(μ/σ)^2を得ることができるのだ。

 

だが実際に庶民が買える投資商品のうち、レバレッジがかけられるものは米国株と米国債券くらいなものである。

シャープレシオが大きいもの、例えば全世界債券やバランスファンドはレバレッジがかけられない。

 

シャープレシオ最強説で選んだ商品にレバレッジがかけられない場合、シャープレシオ最強である意味がない。

従って、シャープレシオだけで投資商品を選んではいけない場合が多いのである。

 

 

重要公式1,2の使い方

投資商品を選ぶ際、もしレバレッジが自由なら、シャープレシオ「μ/σ」最大のものに、重要公式2「μ/σ^2」倍のレバレッジをかけるのが最もお金が増える。

 

しかし現実の商品はレバレッジ不可である場合が多い。

シャープレシオ最大の投資商品がレバレッジが不可で、かつ最適レバレッジが1以上である場合、大原則である重要公式1「μ−σ^2/2」に立ち戻って選びなおさなければならない。

 

これが投資の正解の導き方である。

 

 

まとめ

これにて、何か一つだけ投資商品を選ばなければならない場合の投資の正解が導けるようになった。

 

しかし現実には株、債券、金などを組み合わせて投資することが可能である。

 

この場合、最適な組み合わせはどうやって選べばよいのだろうか。

次ページ以降解説する。

【問題3】最適レバレッジ

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問題3

上の問題を解いてみて欲しい。

 

リスク資産はリターン5%リスク25%。計算すると幾何平均リターンは約2%だ。

 

この世に投資商品がこれしかないとして、100万円の自己資金に対してレバレッジは何倍かけるのが正解だろうか?

 

 

考えられる答え

この問題に「最大レバレッジ25倍!」と答える人はいるわけがないだろう。

 

と思っているがひょっとしたらいるのかもしれない。

平均リターンがプラス、それどころか幾何平均リターンもプラスなので、レバレッジは大きければ大きいほど良い、と考える人はいそうだ。

 

FXでレバレッジをかけすぎて破産、なんて話をよく聞くのも、似たような考えで最大までレバレッジをかけてしまう人がいるのだろう。

 

しかし、25倍もレバレッジをかけたら4%下がるだけで強制決済である。

どう考えても掛けすぎだ。

 

 

だがもはや判断基準がない。

数学的センスのある人でもこの問題は答えられないだろう。

 

知らないと答えられないのだ。

 

 

答え

  リスク
資産
  60% 80% 100%
リスク 25% 合計 現金 投資額 合計 現金 投資額 合計 現金 投資額
平均リターン 5% 100.0 40.0 60.0 100.0 20.0 80.0 100.0 0.0 100.0
1年目 30% 118.0 47.2 70.8 124.0 24.8 99.2 130.0 0.0 130.0
2年目 -20% 103.8 41.5 62.3 104.2 20.8 83.3 104.0 0.0 104.0
3年目 -20% 91.4 36.6 54.8 87.5 17.5 70.0 83.2 0.0 83.2
4年目 30% 107.8     108.5     108.2    
                         

答えは「レバレッジ0.8倍」である。

 

100%投資するよりも、80%投資する方がお金が増えるのだ。

 

実際に計算した例が上表である。

 

80%だと4年後に108.5万円になるが、100%だと108.2万円にしかならない。

80%以下、例えば60%だと107.8万円にしかなず、どんどん減っていく。

逆に100%以上にレバレッジをかけても、得られるお金はどんどん減っていく。

 

 

どうやって求めるのか

レバレッジ25倍は掛けすぎ、くらいのことは直観でわかっても、まさか100%投資してはいけないなどということが分かったであろうか。

 

 最適なレバレッジはいくらか、

 

これも、リスクとリターンから計算できる。

だからこそ、幾何平均リターンを使うのではなくリスク・リターンの組み合わせで投資商品を表すのだ。

 

次ページ以降、最適レバレッジの計算方法について解説していく。